
第五回 設備の謎に迫る
「うちの牧場も、いろいろな設備が増えたな」
「”馬蹄石採掘場”や”温泉”も建設したし、”馬運車”も買った。どれも役に立っているものばかりだ」
「……ただ、使い込めていないから、設備の詳しい機能って把握できてないんだよな…」
「おや、かずまさん。お悩みですか?」
「ええ、知りたいことがありまして…、そうだ」
「牧場長、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「牧場の設備に関して、教えてほしいんですよ」
(牧場長は、うちの牧場の管理をしていて、馬房の掃除や馬のお世話、いろいろなことをしている)
(親父が牧場主だったころから牧場で働いている、この牧場で一番古参の方だ)
(俺も子供の頃お世話になっていて、かずまぼっちゃんって呼ばれていたんだよな。今思えば結構恥ずかしいな…)
「牧場の設備ですか?」
「ええ。うちの牧場も設備が増えてきましたけど、忙しいのもあって、詳しく機能のほうを把握し切れてないんです」
「例えば、馬蹄石採掘場なら『どれくらいのペースで掘れているのか』とか、『いくつまで保管しておけるのか』などですね」
「なので、今後設備を上手く使うためにも、設備のことをきちんと知っておこうと思いまして」
「なるほど、わかりました。私でよければお教えします」
「助かります」
「では、現地で説明しましょう」
馬蹄石採掘場
「まずはこちらの『馬蹄石採掘場』ですね」
「金の馬蹄石が掘れるところが見つかった、ということで、採掘道具とか揃えたんですよね」
「はい。採掘作業等で時間がかかりますが、大体”5時間に1つ”掘ることができていますね」
「”1日4、5個採れている”のか」
「そうですね。”採掘場の保管庫は50個まで入れることができます”ので、”10日ほどでいっぱい”になります”」
「”保管庫がいっぱいのままですと、採掘ができません”ので、いっぱいになる前に取りに来るのがいいでしょうね」
「なるほど。今まではちょくちょく取りにいっていたけど、それだけ期間があるとまとめて取りにきたいですね」
「忘れそうなのが怖いですけど…」
「それなら心配いりません。”保管庫がいっぱいになりましたら、かずまさんにご連絡致します”」
「助かります、お願いします」
「”通知はできるだけONにしておいてくださいね”」
(メールとかで連絡が来るのかな?)
馬運車
「次は『馬運車』ですね」
「馬運車は”競走馬が遠征するときの、負担を減らします”」
「負担を減らしてくれるから、”馬体重の減少や調子の変動がない”んですね」
「その通りですね」
「先日遠征した時も、馬体重の変動も、調子も変わっているような素振りもなかったですし…」
「レースに行く前の、馬体重や調子の調整が必要がなくなった”ので、この馬運車は本当に凄いですよ」
「値段を聞いたときは馬鹿げていると思いましたけど、十分に価値はありました」
「そうですね、本当に素晴らしい馬運車です」
「いったいどんな技術を使っているんだろう……」
「なんでも、どんな場所でも揺れや振動を感じさせない、宇宙ロケットに使うような最新技術が使われているようです」
「なので、馬運車の中でも、馬は普段通りに過ごすことができて、負担がかからないそうですよ」
「本当のところは、わかりませんが」
「へえ…だからあんな価格なのか…。その技術は気になるな……」
「気にはなるけど、さすがに10億もした車を、分解して調べる勇気はないな」
温泉
「最後に『温泉』ですね」
「”放牧している馬の怪我の治りが早くなって助かっています」
「でも、どれだけ早くなっているんでしょうね…」
「そうですね、どれだけ早くなるのか、というのはわかりかねますが」
「温泉を建てた後に、骨折した馬を放牧に出されたことがありましたが、その時、”二ヶ月ちょっと”で完治したことはありました」
「骨折の度合いにもるけど、”治療には大体三ヶ月から六ヶ月”ほどかかるから…結構早くなっているな…」
「もう一つ。この温泉は”馬の体質改善にも良い”みたいです」
「え、そうなんですか?」
「はい。”必ず改善されるわけではない”ようですし、”限度もある”みたいですが、馬の体質が良くなる、という効能があるそうですよ」
「なるほど…。虚弱体質の馬を、効能目当てで放牧するのも良いかもしれないな…」
「…でも、維持費が大変なんだよなあ……」
「温泉は休業できます。休業中は維持費がかかりませんので、利用しない時は休業されるのはどうでしょう」
「本当ですか、それはありがたい。放牧したい馬ができたら、また開業すれば良いんですよね」
「はい。開業する際に、また費用がかかってしまいますが」
「その価値はあると思います」
「いろいろ勉強になりました」
「お役に立てましたか」
「思わぬ情報が聞けました。これからはもっと、うまく設備を使っていきます。また何かあったら教えてください」
「はい。もちろんです」
次回予告
「この牧場に戻ってきてから、いろんな人と仕事してきたけど、案外プライベートって知らないな」
「もし機会があれば、プライベートな話も聞いてみたいな」